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    ふいに、彼は頭を上げた。

    房一はすぐと、大石練吉のことを思ひ浮かべた。大事をとるといふ名目で、彼の対診を求めることにしたのである。

    「入りましたよ。それがねえ、穴の中は苔が生えたやうな、水たまりもあつてね、やつとこさ奥まで行つてみたんだが、まはりの土はぼろぼろ落ちるし、何のことはない洞穴でさあね、――それでも連中はあつちこつち突ついてみてたがね、含有量はまあもつと試掘してみなけりや判らんさうですよ」

    「まだつて、はじまつたばかりですよ」

    と訊いた。

    「さう。――いゝやうだ」

    「あれらしいのよ」

    房一はむつつりとしたまゝ答へた。

    「もう帰つたんかね」

    その患者といふ言葉を、まだ云ひ慣れないために特別な発音をしながら、盛子はあわてて房一に声をかけた。

    「こゝの消防演習をやつたのだ。そんなに騒ぐことはない」

    「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。

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