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「いや、さういふことは人によつてはあるんだよ」
と、房一の近くで云ふ声が聞えた。今泉らしかつた。つづいて同じ声が
「どうも御苦労さま、暑いところを」
「相手は誰です?こゝの御隠居ですかい」
「いゝ恰好で!」
すさまじい怒気のやうなものが、房一のあらゆる部分に燃え立ち、彼のいかついむくれ上つた肩は二倍も大きくなつて見えた。それに圧倒されたものか、物音は止んで、房一が何かしきりと云つているのが聞えたが、間もなく二三人がごそごそ土手を降りて行つた。
「なあ、先生」
「何しに来た!」
何となく視線が自分に向けられるのを感じながら、房一は案外に落ちついていた。予期した通りだつた。房一の腹の中はきまつていた。
「いためた?」
と、彼は恐しく手まどつて答へた。
房一には連れが二人あつた。