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「大きいやつだねえ」
「いつこちらへお帰りでしたか」
「いゝ恰好で!」
と、道平は明かに盛子に気兼ねをしているらしかつた。
徳次は、両手に海苔まきとゴマをまぶした握飯と二つとも慾ばつて持ち、紙の袖をいやといふほどたくし上げ、冠をどこかへ脱ぎすてたので、いがくり頭ときよろりとした眼とを何かむき出した風に目立たせながら、足を踏んばつて云つた。
房一の竿に最初のやつが掛つた。
「いかんと云ふわけもあるまいさ」
その時、突然練吉は、房一がさう云ひかけたまゝ当惑した表情になつたのを見た。
「これを御大典のお祝ひ日に着るんですつて」
「――?」
「さうなんです。ちやうどいゝ案配でした」
「ほう、往診かね」
「知吉さんはこれまで散々踏みつけられて来たんだから、自分が戸主になつてみるとこれまでの腹いせといふ気もあるんでせうな」